みーの医学

2016年3月に110回医師国家試験に合格しました.医療従事者のためのWebサービスであるLafLaboの開発者です.

医師国家試験の勉強法と教材比較 (QB, TECOM, MECなど)

医師国家試験の勉強をするにあたり,教材選びは最初の難関です.国家試験に無事合格したみーが,今までの勉強を振り返って,国家試験の教材について意見をまとめました.

最初に,みーがどんな人かをお伝えしないと参考にならないでしょうから,簡単に自己紹介をします.

みーの脳と勉強スタイル

みーは物事をイメージで捉えて論理的に関連付けていく理系人間で,丸暗記が本当に苦手です.具体的には,理科や数学が得意ですが,社会が苦手です.英語の文章を読むのは好きですが,英単語帳は全く頭に入りません.漢字は読めるけど書けないので,メモ用紙にはひらがなが目立ちます.

勉強スタイルは,講義はほぼ聴くだけ,教科書は読むのみで,ノートはほとんど取りません.1回書くよりも5回読んだ方が早いし記憶に残るからです.記憶したことを後で簡単に思い出せるようにするためにevernoteに簡単なまとめノートを作成します.

あなたがみーに近いタイプならば参考になると思います.そうでなければ,こんな人もいるんだな,という軽い気持ちで読んでください.

国家試験勉強の原則

国家試験の勉強で重要なことは,過去問を生きた知識として蓄えていくことです.これができれば合格できると多くの人が主張しています.したがって,過去問の正答番号丸暗記や,教科書読むだけで過去問演習をしないのは効率が悪いと思います.過去問演習という観点では,クエスチョン・バンク一択です.ネット講座を聞くだけでは,演習量は足りないでしょう.

もう一つの原則が,「周囲と同じことをする」です.医師国家試験の合格率は9割を超えているので,偏差値50あれば余裕で合格できます.したがって,周囲と同じことをしていれば合格できるわけです.正確に言えば周りが知っていることは覚えるだとみーは思います.友達との雑談で,みんな知っているのに自分は知らない知識が出てきたら後でこっそり勉強しましょう.差を埋めることができます.

なお,周りと同じことをしないといけないから,TECOMが好きだけどMECもやろう,というのはナンセンスだと思いますが,勉強会のメンバーがTECOMを採用しているせいで自分だけ勉強会に入れない,という参加制約(国際生活機能分類)を受けるのならばTECOMに乗り換えるメリットがあるかもしれません.

クエスチョン・バンク (QB)

クエスチョン・バンクは,国家試験過去問を疾患ごとに並び替えて解説を付けた問題集です.Vol 1-7まであって,国家試験までに2週するのが最低とされています.シリーズ全冊を並べると30cm以上あるので,あまりの量に圧倒されますが,こればかりは頑張るしかないです.

問題をただ解くだけではなく,疾患のイメージや知識を定着させていくことが重要だと思います.

問題がすべて過去問なので,「これは覚えなくていいやろ〜」という甘えが一切できず,身が引き締まります.また,採点除外問題は飛ばしてしまいそうになりますが,リベンジ問題として出題される可能性があるので,しっかりと見ておきましょう.

注意しなければならないのは,解説文の質です.ずさんな解説文がちょいちょい存在するので,適宜教科書を参照しながら解き進めていくのが重要です.

自分で教科書を読みながらコツコツとQBを解き進めることができるタイプの人ならば,ネット講座なしでも国家試験には対応できると思います.みーは友達と勉強会を定期的に開催して,クエスチョン・バンクを解き進めるペース作りに役立てました.

みーは最終的にQBを2週し,4年分の過去問を演習しました.結果的にはこれで十分でした.

ブラウザーで問題演習ができるのも便利です.疾患検索ができたり,自分の苦手な問題を一覧にしたりできるので,重宝します.なお,オンライン版の有効期限が2年なので,5年生の春に購入しましょう.4年生で先走って購入すると6年生になってから再購入する羽目になるので注意です.(コメントにて,4年生で購入しても6年生まで使えるという情報がありました.最新の情報を確認してから購入を検討してください.2017.10.31追記)

qb-online.com - qb online リソースおよび情報

教科書

Year Note

メジャー内科で必要な知識がコンパクトに記載されています.過去問の症例問題を味わいながらYear Noteを参照することで,疾患のイメージが定着すると思います.m2plus版やmediLink版などの電子版は検索できるので,知識の確認がしやすいです.

review book

Year Noteだけではマイナー科,産婦人科小児科,公衆衛生,必修が抜けているので,それぞれreview bookで補います.コンパクトにまとめてあるので有用な教科書です.

STEPシリーズ

初学者におすすめの教科書です.みーは全巻最低2週は読みました.疾患の重要なポイントや,イメージ,理由,関連付けが分かりやすいのでおすすめです.これを読めば,ヒトの体の中で何がどうなっているのかがイメージできるようになると思います.

ただし,わかりやすさのために,説明をはしおっているような箇所があります(悪性腫瘍の治療の分類などで顕著).国家試験との整合性のためにところどころ知識の修正が必要です.

診療科による当たり外れは少ないと思います.ただし,STEP産婦人科と整形外科は読んでも全くイメージが沸きませんでした.これらの分野に関しては病気がみえる産婦人科とreview book マイナーをおすすめします.

病気がみえる

疾患のイメージを作るのによい教科書です.イラストが豊富なのでパラパラと眺めていると楽しいです.STEPシリーズで理論を理解した上で病気がみえるを使ってイメージを定着させるのがよいと思います.

中山 内科学書

内科学の成書としてm2plusの電子版を購入しました.本だと通読するには分厚過ぎるし重すぎるので,電子版がおすすめです.みーは検索して知りたい項目を適宜読むという使い方をしています.分かりやすくまとまっていますし,論文の引用もしてあるので深く勉強することができます.読むのに前提知識が必要なので,初学者には向いていません.ある程度知識が増えてから購入するのをおすすめします.本屋で比較しただけですが,ライバルの朝倉内科学書と大きな差があるようには思えませんでしたので,朝倉と中山のどちらかを買えばよいと思います.

なお,内科学の成書としてハリソン内科学書が有名でよいとされていますが,みーは使っていません.理由は,英語版だと日本特有の事情・法律・ガイドラインが勉強できないというデメリットがありますし,和訳本は電子版が出版されていないので持ち歩きができず利便性で劣るからです.和訳本の電子版が出たら即買いすると思います.

UpToDate, ガイドライン

読んでいて楽しいですし,達成感がありますが,限られた時間の中で国家試験に必要な知識を身につけるには,量があまりにも膨大だと思います.

模試

国家試験の模試は,TECOMとMECの2社が提供しています.みーは2社の模試を6年生ですべて受験しました.

TECOMの模試は,大学受験で例えるならば駿台みたいな模試で,国家試験の嫌らしさを焼きまわしたような独特な問題です.MECの模試は河合塾みたいな模試で,国家試験の過去問らしさを受け継いだストレートな問題です.TECOMの模試の嫌らしさはデメリットに感じますが,多くのことを学べるメリットと表裏一体の関係にあります.MECの模試は過去問に類似した内容なので,学べることが少ない,と評価することもできます.

TECOMの1,2回目の模試は受験しなくてもよかったなと思えるぐらい簡単な内容でした.3,4回目はかなりしっかりと作りこまれていたので,新しく得る知識が多かったです.最低限に絞るならば,3,4回目を受験すればよいと思います.

なお,MECの冬模試には,実際の国家試験の会場で受験することができる「現地受験」サービスがあります.本番前に会場への行き方を確認することができますし,建物の構造や雰囲気も分かるので精神的に安心できました.おすすめします.

ネット講座

TECOM ネット講座

みーはTECOM SELECTを受講しました.ノートを作れと言われましたが,世の中にはきれいにまとまっているノート(Year Note, review bookなど)がたくさんあるから無駄だろうと思ってノートは取りませんでした.講義を最高倍速で聞いてみましたが,教科書に記載されていることを多少分かりやすくした程度だったので,結局ほとんど視聴しませんでした.

単位時間あたりの情報伝達速度で考えると,ネット講座の最高倍速よりも教科書を読むほうが5倍ぐらい早いです.なぜならば,動画は飛ばしながら見ることができませんが,教科書はななめ読みできるからです.2時間あれば薄めの教科書1冊を読めますが,講義を2時間聞いたところで,2コマしか進みません.

直前期に精神安定剤としてラストV講座を受講しましたが,これも無意義でした.国家試験前日に200ページもある教科書を渡されて,軽く見てね〜と言われながら5時間の講義中継は,退屈でしたし,効率も悪かったです.なにより,出題が予想されるという事項は,本番では出なかったり,既に知っている知識だったりしたので,ラストV講座を受講したからといって点数が上がったとは思えませんでした.

途中,アンパンマンマーチを歌い出した教師がいてイラッとしました.別の先生は,国家試験の出題員の先生に会うためにわざわざ学会に行って,「ヒルシュスプルング病を出題すればよいと思います」と提言してきた,と自慢をしていました.余計なお世話です.みーがこんなことを言われたら,絶対に出題しないです.ちなみにヒルシュスプルング病は本番では一切登場しませんでした.みーの予想通りのオチでした.

なお,TECOMを代表するMTM先生は,板書と教科書と声をうまく使い分けていらっしゃったので,記憶に残りやすいよい授業だと思いました.しかし,他の先生方は教科書をスライドに写して同じ内容をしゃべるだけの授業をされるので,記憶に残らなかったです.紙に書いてあるのと同じ内容を話すだけの説明は記憶に残りにくいことが,以下の記事で科学的に証明されています.

Research points the finger at PowerPoint

ネット講座を視聴する際は,こういった点を意識すれば,メリハリのある勉強ができるのではないかと思います.試しに講義をラジオにしてみたところ(=動画を見ずに音声だけを聴くということ),少し理解が深まったような気がしました.

MEC ネット講座

MECネット講座はTECOMと並んで有名ですが,みーは受講していません.友達の教科書を見せてもらったりしましたが,教科書の半分がメモ用の空欄という時点で却下しました.最初からそこに書いてもらえれば手間が省けるのに,と思いました.

KSR信者な友達が直前期に増えていたので,みーが知らない魅力があるのかもしれません.

ネット講座はTECOMかMECかで悩む人が多いですが,友達の様子を見ているとどちらを選択しても勉強すれば知識になるのは間違いなさそうです.それぞれのサンプル講座を見て,相性がよさそうな方を選択すればよいと思います.一度決めたら,それを信じて勉強することが重要だと思います.両方やる意味はなさそうです.

病院実習

病院実習を教材に分類するのは少し違うような気もしますが,ここで触れます.

病院実習は将来医者として働く上での前提知識を身につけるための貴重な機会です.その一方で,臨床実習ですべての疾患を経験することは不可能です.したがって,足りない部分は教科書などを利用して自分で補う姿勢が,国家試験では重要だと思います.

病院実習は精神的にも体力的にも大変ですが,実習を一生懸命やったからといって国家試験用の知識が身につくわけではないので,病院実習と国家試験勉強の時間配分に注意する必要があると感じました.

また,昨今の国家試験は臨床実習の成果を問う問題を出す傾向があるようです.実習では医療器具とその使い方を意識して見ておいた方がよいと思います.

みー的には,臨床実習の成果を評価するならば,模擬患者さんに問診をしてPOMRなカルテを作成し治療方針を立ててプレゼンする試験にすればよいと思います.費用や会場準備・均一性の維持など難しい問題があるとは思いますが,将来的にはこのような実技試験も導入されるのではないかと予想しています.

まとめ

結局,QB信者,アンチ予備校な文章になっちゃいました.まとめると,QB,TECOM,MECの中から自分に合いそうなものを選んでしっかりと勉強して,病院実習とのバランスに注意しながら過去問を解き進めていけばよいということだと思います.

勉強の際は,本サイト「みーの医学」にて紹介しているたくさんのゴロ合わせが,暗記の一助となるかもしれません.是非ご利用ください.