矛盾する説明はしばしば存在します.
例えば,「二度あることは三度ある」と「三度目の正直」は激しく矛盾しています.2回やってダメで,3回目もダメならば,「二度あることは三度ある」と説明し,3回目にうまくいったら,「三度目の正直」と言うわけです.どっちに転んでも説明できるというのは,無責任ですね.
よいニュースを発表した企業の株価変動の説明も,「好材料が評価され価格は上昇した」「好材料出尽くし企業本来の価値に修正され下落した」と,上昇しても下落してもアナリストは堂々と説明します.
このような説明は医学の世界にもあることに気づいたので紹介します.
薬の量と作用の説明
「副作用を最小限に抑えるために,1日3回に分けて飲んで下さい」
「副作用を最小限に抑えるために,1日1回一度に飲んで下さい」
一見矛盾しているような2つの説明ですが,どちらの説明もあり得るはずです.この話を理解するには,PK/PD理論が分かっている必要があり,詳細は以下で説明しています.
血中最大濃度(Cmax)と有効血中濃度持続時間のどちらが副作用に影響を及ぼすのかは薬剤ごとに異なるので,上記のような一見矛盾する説明が共存するわけです.正しく説明するならば,以下のようになります.
「この薬は,血中最大濃度が高くなると副作用が出やすいので,1日3回に分けて飲んで下さい」
「この薬は,血中の濃度が高い時間が増えると副作用が出やすいので,1日1回で飲んで下さい」
つまり,濃度依存性に副作用が出現するのか,時間依存性に副作用が出現するかによって結論が変わるわけです.