GCS (Glasgow Coma Scale) は初学者にとってとても不親切な基準なので,覚え方をまとめておきます.
[目次]
全体像
まず,EとVとMがあります.以下の頭文字です.
- E: Eye Opening
- V: Best Verbal Response
- M: Best Motor Response
それぞれには満点があって,Eが4点,Vが5点,Mが6点満点です.Vがローマ数字で5なので,Eは1つ少なく,Mは1つ多いのだと思い,最大15点,最低3点と覚えておきます.次にそれぞれの項目をみていきます.
E: Eye Opening (4)
音声による刺激と,痛み刺激によって4段階に分けます.
4: Spontaneous 自然に開眼 (自然に → 4然に)
3: To speech 命令すると開眼 (たくさん声かけて → たく3)
2: To pain 痛みに対し開眼 (ツネッテ → 2ねって)
1: None 開眼しない
V: Best Verbal Response (5)
以下のイラストで覚えるとよいと,友達に教えてもらいました.
5: normal conversation 見当識がある
4: disoriented conversation 意味のない会話をする (指4本で何て?とよくわからない様子)
3: words, but not coherent 意味のない単語を発する (指3本でWなのでword)
2: no words, only sounds 単語にならない発声のみ (指2本でVなのでvoice)
1: none 発語なし (一本指で無言)
Motor Response (M)
同様にイラストで覚えます.
6: normal 命令通りに動ける
5: localized to pain 痛み刺激の部位が分かる (手を広げて5の形で部位を示す)
4: withdraws to pain 痛みに対して手足を引っ込める (腕が屈曲して4の形)
3: decorticate posture 病的屈曲 (除皮質硬直) (両手で3の形)
2: decerebrate 伸展反応 (除脳硬直) (横から見ると腕が2の形)
1: none 反応なし
M5とM4がややこしいのですが,痛みに対して手足を引っ込めるという逃避行動が見られたらM4で,それより上で命令に従わない場合をM5と評価します.例えば痛み刺激に対して払いのける場合は,M5となります.
評価のポイント
GCSでは最良の反応で評価することになっています.部位によって異なる所見が得られた場合は,点数の高い方を採用します.
練習
医師国家試験の問題を一部改変しています.
98C22
30歳前後の男性.人工呼吸下に救急車で搬入された.
現病歴:公園で倒れているのを通行人に発見された.救急隊到着時,意識は混濁し,自発呼吸は微弱であった.呼気に芳香臭があり,発見現場から不凍液(エチレングリコール)の空容器と三環系抗うつ薬アミトリプチリンの空包装とが見つかった.
既往歴:不明.
現 症:体格栄養中等度.体温36.5℃.脈拍100/分,整.血圧90/60mmHg.痛み刺激を与えても開眼せず,言語反応はない.運動反応を認めない.舌根は沈下し,自発呼吸を認めない.瞳孔径は4mmで左右差を認めないが,対光反射が消失している.眼瞼結膜に貧血なく,眼球結膜に黄染を認めない.心雑音を聴取しない.腹部は平坦で,腸雑音が減弱している.下腿に浮腫はなく,人工呼吸下にチアノーゼを認めない.深部反射は保たれている.
この患者の意識状態はGlasgow coma scaleで何点か.
- 痛み刺激を与えても開眼せず→E1
- 言語反応はない→V1
- 運動反応を認めない→M1
したがって,E1V1M1の3点となります.
109C8
頭部外傷で救急搬送された患者が,痛み刺激で開眼せず,意味不明の発声があり,疼痛刺激部分からの逃避運動をするとき,Glasgow coma scaleを評価せよ.
- 痛み刺激で開眼せず→E1
- 意味不明の発声があり→V2 (指2本でV→voice)
- 疼痛刺激部分からの逃避運動をする→M4 (腕を屈曲して4)
以上より,E1V2M4の7点となります.
108F20
48歳の男性.意識障害と右片麻痺のため搬入された.自発開眼はなく,呼びかけでも開眼しないが,痛み刺激で開眼する.痛み刺激でうなり声をあげるが,意味のある発語はみられない.また,痛み刺激で右上下肢は全く動きがみられないが,左上下肢は払いのける動作を示す.
Glasgow coma scaleを評価せよ.
- 痛み刺激で開眼する→E2
- 意味のある発語はみられない→V2 (指2本でV→voice)
- 痛み刺激で右上下肢は全く動きがみられないが,左上下肢は払いのける動作を示す.→GCSは最良の反応で評価するので,左上下肢は払いのける動作を評価する→M5 (痛みの場所が分かる)
まとめると,E2V2M5の9点となります.
痛み刺激のやり方
痛み刺激はどのように与えればよいのでしょうか.患者さんのことを思うあまり痛み刺激が少なくて正しく評価できなくても困りますし,痛み刺激が強すぎて怪我をさせてもいけません.簡便で怪我をさせずに十分な痛みを与える方法を知っておく必要があります.
有名な方法として,胸骨に対して中指のPIP関節を立てて押し付ける,というのがあります.
自分でやってみるとわかりますが,思いっきり押しつけると痛いですが,痕は残りません.
もう一つの方法として,ボールペンの側面を指の爪に押し付けます.
ボールペンはその辺にあるのですぐに準備できますし,これも自分でやってみるとわかりますが,思いっきり押し付けると痛いですが,痕は残りません.
ただし,脳梗塞などでその部位の感覚が麻痺している場合は使えないので注意する必要があります.
参考: