遺伝病にはたくさんの種類があり,一部の有名な疾患に関しては遺伝形式を覚えておかないといけません.ここでは,遺伝形式で疾患を整理してみます.
遺伝形式には,
- 常染色体優性遺伝 (autosomal dominant; AD)
- 常染色体劣性遺伝 (autosomal recessive; AR)
- 伴性優性遺伝 (X-linked dominant; XD)
- 伴性劣性遺伝 (X-linked recessive; XR)
- ミトコンドリア遺伝
があります.数が少ないものはまとめて覚えると楽です.
目次
伴性劣性遺伝
- 血友病A,B
- Duchenne型筋ジストロフィー
- Becker型筋ジストロフィー
- 赤緑型色覚異常
- Lowe病
- Fabry病
- G-6-PD欠損症
- Hunter病
- Lesch-Nyhan症候群
- Wiskott-Aldrich症候群
- Bruton型無γ-グロブリン血症
- 慢性肉芽腫症
伴性劣性遺伝は疾患数が少ないので丸暗記するのが楽です.
ABCDEFGH-BMW
A,B,C,D,E,F,G,Hが頭文字になっており,順に想起ができる覚え方です.
- A, B: 血友病A,B
- C: Color→赤緑型色覚異常
- D: Dystrophy (Duchenne, Becker)
- E: L"e"sch-Nyhan症候群
- F: Fabry病
- G: G-6-PD欠損症
- H: Hunter病
これに,先天性免疫不全症候群の3つの疾患の頭文字BMWを追加して完成です.
- B: Bruton型無γ-グロブリン血症
- M: 慢性肉芽腫症
- W: Wiskott-Aldrich症候群
伴性優性遺伝
かなり特殊な遺伝形式です.一般的に,男性の場合は異常なX染色体しか持っていないために流産します.したがって女性のみに見られることが多いです.
- Alport症候群
- Rett症候群
- 色素失調症
Alport症候群は,感音性難聴,白内障,を伴う遺伝性進行性腎炎である.
Rett症候群は,生後5ヶ月を過ぎた頃から常同的な行動がみられ,頭部発達が阻害されて小頭症となり,生後2歳でそれまで獲得した言語や技能を失う進行性の神経疾患です.
色素失調症(ブロッホ・サルツバーガー症候群)は、出生時より皮膚病変が炎症期→疣状発疹期→色素沈着期(マーブルケーキ様)と変化する疾患で,眼(斜視,白内障),中枢神経症状(痙攣,知能障害),歯の欠損,発育不全,骨病変(小人症,多指症)を合併します.
ミトコンドリア遺伝
ミトコンドリアに含まれるmtDNAの変異や量的変化によって引き起こされる疾患のことです.精子に含まれるミトコンドリアは子供には受け継がれないため,母親からのみ遺伝します.母系遺伝です.
ミトコンドリア病の3大病型に,CPEO, MELAS, MERRFがあります.ミトコンドリアが障害されているので,多量のエネルギーを必要とする臓器が障害されます.
- 筋肉→筋力低下, Ragged red fiber
- 脳→知能低下,脳卒中様症状,てんかん
- 耐糖能→糖尿病,
- 目→外眼筋麻痺
- 耳→感音性難聴,網膜色素変性症
- 心臓→伝導障害
血液or髄液の乳酸とピルビン酸の高値が診断につながります.
常染色体優性/ 劣性遺伝
いろいろな場合があるので,これを覚えるのは一筋縄ではいかないようです.原則があるので示します.
- 代謝性疾患は劣性遺伝が多い
- triplet repeat diseaseだからと言って遺伝形式は決まらない
代謝性疾患は劣性遺伝が多い
フェニルケトン尿症,ホモシスチン尿症,ウィルソン病(ATP7Bの変異)などを思い出しましょう.
triplet repeat disease
triplet repeat diseaseといえば,以下の疾患が有名ですが,遺伝形式はまちまちです.覚えるしかないですが,覚える必要があるのかは分かりません.
- ハンチントン舞踏病 (AD)
- 脊髄小脳失調症1型(spinocerebellar ataxia 1;SCA1)、SCA2、SCA6、SCA7 (ADなどいろいろ)
- 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (AD)
- マシャドージョセフ病(Machado-Joseph病; SCA3) (AD) (下位運動ニューロン障害と球麻痺) (医師国家試験 108A31にて登場.心臓に悪すぎる)
- 球脊髄性筋萎縮症 (XR)
- フリードライヒ失調症 (AR)
まとめ
疾患と遺伝形式の関係は単純丸暗記でどうしようもないので,上述の事項を覚えて,それでも分からない疾患が出てきたら,常染色体優性と劣性の1/2の確率でカンで選ぶという戦術も悪くないかもしれません.単純丸暗記をするぐらいなら,他の勉強をした方が点数は上がるかもしれません.
*1:医学語呂なう@med56_bot より一部改変して引用.