慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬である,チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は現在たくさん開発されています.現在はイマチニブ (グリベック®),ダサチニブ (スプリセル®),ニロチニブ (タシグナ®),ボスチニブ (ボシュリフ®)が存在し,それぞれ特有の副作用があります.まとめてみました.
(記事中で特定の薬を悪く表現している箇所がありますが,覚え方を提案しているだけであり,薬そのものを批判しているわけではないことを予め断っておきます.)
一般名の接尾語
チロシンキナーゼ阻害薬 (Tyrosine-kinase inhibitors)の頭文字をとって,Tyrosine-kinase→TI, inhibitor→NIB と変化させ,-tinibという接尾語がつきます.例えば,ImatinibならばImaという名前のTKIという意味になります.
イマチニブ Imatinib (グリベック®)
ノバルティス ファーマが開発した世界初のチロシンキナーゼ阻害薬で,2001年5月に米国で承認されました.けっこう昔の薬です.Bcr-Abl融合蛋白が恒常的に活性化しているのを阻害し,細胞の増殖を抑制します. *1
初期の薬なので,イマイチだから,イマイチニブ,と覚えます.
ダサチニブ Dasatinib (スプリセル®)
イマチニブよりもたくさんの種類のチロシンキナーゼを阻害するように設計されたチロシンキナーゼ阻害薬です.Spryは「健康な」という意味で,CMLの治療で健康な細胞が増えますようにという願いを込めて,Spry + cell→スプリセルと命名されました. *2
Srcファミリーキナーゼを阻害することで胸水貯留を来しやすく,ダサいので,ダサチニブ,と覚えます.
ニロチニブ Nilotinib (タシグナ®)
イマチニブよりもBcr-Abl融合蛋白特異的に結合するように設計されたチロシンキナーゼ阻害薬です.targetであるBcr-Abl特異的にsignalを送ることから,target signal → タシグナ と命名されました.
膵炎や血糖値上昇が起こりやすく,服用に二の足を踏むから,ニノアシニブ,と覚えます. *3
ボスチニブ Bosutinib (ボシュリフ®)
上記3つの薬は現在日本でfirst lineとして使用されています.ボスチニブは上記の薬で治療抵抗性を示すCMLに対して,second lineとして使用が許可されています.Bosutinibで快適な生活を,と願いを込めて,Bosu life→ボシュリフと命名されました. *4
新しい薬だけあって,ニロチニブとダサチニブのよさを足したような薬で,副作用が比較的少なく,ボスみたいな存在感があります.だから,ボスチニブと覚えます.
今後もよりよいチロシンキナーゼ阻害薬が開発されて,CMLの患者さんのQOLが改善されていくといいなと思います.