薬の一般名を覚えるのはとても大変ですが,多くの場合は法則があります.
WHOが管理しているInternational Nonproprietary Name (INN) という規則があり,日本では医薬品一般名称として運用されています*1 .
以下のドキュメントに詳しく記載されています.
みーが気になったところを一部まとめます.
抗炎症薬
- -coxib
セレコキシブ celecoxib などのCOX2阻害薬の最後はcoxib
- -metacin
インドメタシン indometacin などの鎮痛薬の最後はmetacinです.
- -profen
イブプロフェンibuprofen やロキソプロフェン loxoprofenなどの鎮痛薬の最後はprofenです.
そもそも抗炎症薬の語尾はこれ以外にも存在するようで,また例外もあるようで,語尾を理解したから全てが理解できるわけではありません.
バソプレシン受容体拮抗剤
- -vaptan: vasopressin receptor antagonists
トルバプタン tolvaptan など,バソプレシン受容体拮抗剤の最後はvaptanです.分かりやすい名前ですね.
チロシンキナーゼ阻害薬
- -tinib: tyrosine kinase inhibitors
イマチニブ imatinibなど,チロシンキナーゼ阻害薬の最後はtinibです.
モノクローナル抗体
- -mab: monoclonal antibodies
共通の語尾が-mabですが,由来により変化します.
- -amab: ラット由来
- -emab: ハムスター由来
- -imab: サル由来
- -omab: マウス由来
- -umab: ヒト由来
- -ximab: キメラ抗体
- -zumab: ヒト化抗体
例えば,リツキシマブ→ ximabなのでキメラ抗体,インフリキシマブ→ximabなのでキメラ抗体 (inflammation 炎症に効果がある抗体という意味),ニボルマブ→umabなのでヒト由来というわけです.
ただし,薬効と関連しているわけではないので,語尾だけではどうしようもありません.語尾がmabならば抗体の薬なのだろうと推測されるだけです.
ウイルスベクター
- -vec: vector component is a virus
日本で承認されている薬は少ないですが,オナセムノゲンアベパルボベック (Onasemnogene abeparvovec) は脊髄性筋萎縮症に適応があります.ウイルスのベクターを使って運動ニューロンでSMNタンパク質が合成されるようにする薬です.
今後は「なんちゃらベック」が増えていくのではないかと思います.
まとめ
結局はINNである程度の法則が定められているものの限界もあるようです.薬になりえる物質は多岐に渡り,低分子化合物からタンパク質,ウイルスベクター,細胞など,範囲が広いため,統一的な命名は難しいようです.また,昔から存在する一般名を変更することは困難です.化合物を命名するIUPAC命名法と比較すると,とてもゆるい法則ではありますが,抗体医薬やウイルスなどの比較的新しい分野についてはある程度の一貫性を持たせようとしている意図が感じられます.
薬の名前は地道に覚えるしかなさそうです.