みーの医学

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ペゴルの意味

エポエチン ベータ ペゴルや,セルトリズマブ ペゴルのように,医薬品の名称の中に,「ペゴル」という文字列が散見されるので,どのような意味なのか調べてみました.

ペゴルを含む医薬品の具体例

日本医薬品一般的名称で「ペゴル」を検索すると,以下の医薬品が存在することがわかりました.インタビューフォームより抜粋して共通点を探ってみます.

エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)

エポエチン ベータ ペゴルはチャイニーズハムスター卵巣細胞で産生されたエポエチン ベータ(遺伝子組換え)の PEG 化糖タンパク質(分子量:約 60,000)

セルトリズマブ ペゴル(遺伝子組換え)

セルトリズマブ ペゴルは、遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体の Fab'断片の誘導体であり、マウス抗ヒト TNFα モノクローナル抗体の相補性決定部及びヒト IgG1 に由来する定常部とフレームワーク部からなり、H 鎖 227 番目の Cys 残基にメトキシポリエチレングリコール(平均分子量:約 20,000)が 2 分子結合したリジンを含むマレイミド誘導体が共有結合している。セルトリズマブ ペゴルは、214 個のアミノ酸残基からなる L 鎖(κ 鎖)1 分子と 229 個のアミノ酸残基からなる H 鎖(γ1 鎖)断片 1 分子からなる修飾タンパク質(分子量:約 90,000)である。

ダモクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)

ダモクトコグ アルファ ペゴルは、遺伝子組換えヒト血液凝固第Ⅷ因子類縁体(分子量:約234,000)であり、タンパク質部分は、ヒト血液凝固第Ⅷ因子の1~754番目及び1649~2332番目のアミノ酸に相当する。ダモクトコグ アルファ ペゴルは、754個のアミノ酸残基からなるH鎖及び684個のアミノ酸残基からなるL鎖で構成され、Cysに置換されたL鎖の156番目のアミノ酸残基に、ポリエチレングリコール鎖(平均分子量:約60,000)がリンカーを介して結合している。糖タンパク質部分は、1438個のアミノ酸残基からなり、ベビーハムスター腎細胞から産生される。

ツロクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)

ツロクトコグ アルファ ペゴルは、修飾糖タンパク質(分子量:約216,000)であり、ツロクトコグアルファ(遺伝子組換え)のSer750に付加している糖鎖の非還元末端に2本のポリエチレングリコール鎖(合計の平均分子量:約40,000)がアミノ基に結合したノイラミン酸が結合している。

ノナコグ ベータ ペゴル(遺伝子組換え)

ノナコグ ベータ ペゴルは、遺伝子組換えヒト血液凝固第 IX 因子類縁体(分子量:約 98,000)であり、Asn157 又は Asn167 に付加している糖鎖の平均一つの非還元末端に 2 本のポリエチレングリコール鎖(合計の平均分子量:約 42,000)がアミノ基に結合したノイラミン酸が結合している。糖タンパク質部分は、415 個のアミノ酸からなり、チャイニーズハムスター卵巣細胞から産生される。

ルリオクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)

ツロクトコグ アルファ ペゴルは、修飾糖タンパク質(分子量:約216,000)であり、ツロクトコグアルファ(遺伝子組換え)のSer750に付加している糖鎖の非還元末端に2本のポリエチレングリコール鎖(合計の平均分子量:約40,000)がアミノ基に結合したノイラミン酸が結合している。

これらの説明より,「ペゴル (pegol)」は,遺伝子組換えタンパク質に,ポリエチレングリコール鎖(PEG)が結合していることがわかります.

名称にpegを含む医薬品の具体例

PEGが結合している場合,単独でペゴルと付記する方法と,名称にpegを含ませる方法があります.後者の具体例として以下のような医薬品が存在します.

エラペグアデマーゼ(遺伝子組換え)

エラペグアデマーゼは、遺伝子組換えウシアデノシンデアミナーゼ類縁体であり、74 番目の Cys (システイン)が Ser(セリン)に置換され、平均約 13 個のメトキシポリエチレングリコール鎖(分子量:約 5,600)がカルボニル基を介して結合している(PEG 結合可能部位:Ala1 及び Lys 残基)。エラペグアデマーゼは、356 個のアミノ酸残基からなる PEG 化タンパク質(分子量:約 115,000)で ある。

ペガプタニブナトリウム

Modified oligo RNA (molecular weight:ca.50,000) consisting of 28 sodium salt of (2'-deoxy-2'-fluoro)C-Gm-Gm-A-A-(2'-deoxy-2'-fluoro)U-(2'-deoxy-2'-fluoro)C-Am-Gm-(2'-deoxy-2'-fluoro)U-Gm-Am-Am-(2'-deoxy-2'-fluoro)U-Gm-(2'-deoxy-2'-fluoro)C-(2'-deoxy-2'-fluoro)U-(2'-deoxy-2'-fluoro)U-Am-(2'-deoxy-2'-fluoro)U-Am-(2'-deoxy-2'-fluoro)C-Am-(2'-deoxy-2'-fluoro)U-(2'-deoxy-2'-fluoro)C-(2'-deoxy-2'-fluoro)C-Gm-(3'→3') dT attached to α,α'-{[(1S)-1-{[5-(phosphonooxy)pentyl]carbamoyl}pentane1,5-diyl]bis(iminocarbonyl)}bis[ω-methoxypoly(oxyethane-1,2-diyl)]in an ester linkage at the 5'end

ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)

メトキシポリエチレングリコール(分子量:約 20,000)1 分子がフィルグラスチム(遺伝子組換え)の Met1 のアミノ基に結合した修飾タンパク質である。

ペグインターフェロン アルファ‐2a(遺伝子組換え)

分子式:インターフェロン アルファ‐2a(遺伝子組換え), 分枝ポリエチレングリコール:リジン分子のα及びεアミノ基にカルボニル基を介して分子量約 20,000 ダルトンのモノメトキシポリエチレングリコール鎖が 1 本ずつ結合したものからなる。

まとめ

ペプチドなどの物質をポリエチレングリコール鎖で化学修飾することを「PEG化」といい,血中半減期を延長したり,生体内での分布を調整することで,より効果的な医薬品を作成する手段として幅広く用いられています.このようにして作成された医薬品の名称には,「ペゴル」を含むか,「ペグ」を含む場合が多いようです.

参考・引用元

  • ミルセラ注シリンジ 医薬品インタビューフォーム
  • シムジア皮下注 医薬品インタビューフォーム
  • ジビイ静注用 医薬品インタビューフォーム
  • イスパロクト静注用 医薬品インタビューフォーム
  • レフィキシア静注用 医薬品インタビューフォーム
  • イスパロクト静注用 医薬品インタビューフォーム
  • レブコビ筋注 医薬品インタビューフォーム
  • マクジェン硝子体内注射用キット 医薬品インタビューフォーム
  • ジーラスタ皮下注 医薬品インタビューフォーム
  • ペガシス皮下注 医薬品インタビューフォーム
  • PEG化(PEGylation)