みーの医学

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ミトコンドリアのシトクロムと解毒酵素のシトクロムP450の違い

ミトコンドリアの電子伝達系にはシトクロムcという物質が登場する.また肝臓の解毒にはシトクロムP450という酵素が登場する.両者はまったく別のものであるが名前が酷似しているので整理してみる.

まずはミトコンドリアのシトクロムから.

シトクロム cytochrome は迅速な酸化還元を行う物質として発見され吸収スペクトルの違いによって a,b,cの3種類に分類されるがこの分類は機能的にはあまり重要ではない.

シトクロムはヘム基を持つ色素タンパク質である.ヘムには鉄原子があり電子を受け取ると3価の酸化型(Fe3+)から2価の酸化型(Fe2+)となる.

シトクロムは電子伝達系においてユビキノンと同様の可動型の電子伝達体として働き複合体から別の複合体へと電子を運ぶことで複合体がプロトンを輸送する.

次に肝臓にあるシトクロムP450.

肝臓における薬物の代謝は大きく分けて第一相反応(酸化・還元・加水分解)と第二相反応(グリシン抱合・グルクロン酸抱合・アシル化)がある肝細胞内では代謝酵素は主にミクロソームに局在し薬剤の酸化反応に大きな役割を担っているのがシトクロムP450酵素系(CYP)である.多くの亜型があり基質が異なる.

シトクロムP450は活性部位にヘム基を持つタンパク質である.ミトコンドリアのシトクロムと同様ヘムには鉄原子があり電子を受け取ると3価の酸化型(Fe3+)から2価の酸化型(Fe2+)となる.

つまり両者ともヘムを持つタンパク質だがシトクロムcは酵素ではなく電子伝達を担うものでありシトクロムP450は酵素であるというのが違いらしい.

なおシトクロム酸化酵素はまた別のタンパク質でミトコンドリアの電子伝達体の最終ステップを行う酵素である.シトクロムcから電子を酸素に渡してプロトンを輸送する役割がある.膜貫通タンパク質であり酵素である

参考:Molecular Biology of the Cell, シンプル薬理学