水疱症にはたくさん分類があるので覚えるのが大変です.簡単にまとめてみました.
まずは全体的な流れから.
- 水疱症
- 自己免疫性水疱症
- 抗表皮細胞間抗体 (=天疱瘡)
- 尋常性天疱瘡
- 増殖性天疱瘡
- 落葉性天疱瘡
- 紅斑性天疱瘡
- 抗表皮基底膜部抗体
- 水疱性類天疱瘡
- 疱疹状皮膚炎
- 妊娠性疱疹
- 後天性表皮水疱症
- 抗表皮細胞間抗体 (=天疱瘡)
- 先天性表皮水疱性
- 単純型
- 接合部型
- 栄養障害型
- 自己免疫性水疱症
抗表皮細胞間抗体がある水疱症のことを天疱瘡といいます.表皮細胞間にはデスモグレインというタンパク質があってこれに対して後天的に自己免疫が働くのが原因です.デスモグレインなのでDSGです.DSGには1と3があって1は表皮のみ3は表皮と粘膜に発現しています.
- 尋常性天疱瘡 (重症) (Dsg3 時に1も)
- 増殖性天疱瘡 (重症) (Dsg3)
- 落葉性天疱瘡 (軽症) (Dsg1)
- 紅斑性天疱瘡 (軽症) (Dsg1)
したがって尋常性と増殖性ではDsg3がある表皮と粘膜両方に水疱ができます.口腔や食道にも粘膜疹があるということです.対して落葉性と紅斑性はDsg1がある表皮のみに水疱ができます.粘膜にできるからというわけではありませんが疾患の重症度もこれに相関するようです.
表皮には全て症状が出るので4つ全てに基底層直上に棘融解が見られます.Nikolsky現象(=健常な皮膚面に対して機械刺激を加えると水疱が生じる)も表皮がダメージを受けているので全て陽性です.
抗表皮基底膜部抗体がある水疱症には下記のものがあり表皮基底膜部にはBP180, BP230というタンパク質がありこれに対して後天的に自己免疫が働くのが原因です.ちなみにBPはbullous pemphigoid (水疱性類天疱瘡)のことです.
- 水疱性類天疱瘡 (BP180, and 230)
- 疱疹状皮膚炎 (BP180, and 230)
- 妊娠性疱疹 (BP180)
- 後天性表皮水疱症 (7型コラーゲン)
基底膜に水疱が生じるので表皮下水疱となります.表皮下なので緊満性です. 対して天疱瘡は表皮直上なので弛緩性です.後天性表皮水疱症は後述します.表皮下なのでNikolsky現象は陰性です.
これらの鑑別ですが蛍光抗体法にて表皮細胞間にIgG, C3が網目状に沈着するのが天疱瘡で表皮下基底膜に沈着するのが後者です.抗原の発現部位を考えれば当たり前のことです.
先天性の表皮水疱症ですが先天的に基底膜部の接着能の低下によって出生直後から水疱を生じる疾患です.欠損がある遺伝子とその役割を考えればどこに水疱が生じるのかが\ 分かりやすいです.
- 単純型 (ケラチン5, 14) (表皮内水疱)
- 接合部型 (ラミニン5 or BP180) (基底膜直上での水疱)
- 栄養障害型 (7型コラーゲン) (真皮内水疱)
http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/AyumiArticleDetail.aspx?BC=923011&AC=8524 より
基底膜よりも上の水疱ならば瘢痕は残しませんがそれ以下で水疱ができると瘢痕が残ります.なので単純型と接合部型は瘢痕ができませんが栄養障害型は瘢痕が残ります.\ 栄養障害型は粘膜の侵襲が強いために食道狭窄によって栄養障害を起こすからです.
遺伝形式と症状は以下のようになります.
- 単純型
- AD (良好)
- 接合部型
- AR
- Herlitz型: ラミニン5 (早期に死亡)
- 非 Herlitz型: BP180 (症状はさまざま)
- AR
- 栄養障害型
- 7型コラーゲン
- AD (不良 ARよりはよい)
- AR (不良)
- 7型コラーゲン
ちなみに BP180 = 17型コラーゲン です.ややこしい!さらにラミニン5 = ラミニン332 です.332と表現されている文献も多いので注意!
説明を飛ばした後天性表皮水疱症ですがこれは後天性の栄養障害型だと考えればおっけーです.7型コラーゲンに対する自己抗体ができるのです.
参考:
- STEP皮膚科
- http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/AyumiArticleDetail.aspx?BC=923011&AC=8524
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/181
- https://www.reprocell.com/es/list/laminin-5/