B型肝炎は,罹患すると急性肝炎や慢性肝炎を発症し,一部の人は肝硬変肝臓癌を発症する恐ろしい疾患ですが,現在はワクチン接種によって防ぐことができます.
B型肝炎ウイルスは血液や体液を介して感染します.母親が持続感染している場合は子供は産道出血により感染することがありますが,針刺し事故などによって偶発的に感染する場合も多いです.したがって,B型肝炎のリスク因子に「医療従事者であること」 という項目があるほど,病院で働くということはB型肝炎に感染する可能性と隣合わせであるといえます.
現在では,大学が臨床実習に行く前の学生に対してB型肝炎ワクチンの接種を行います.この接種は計3回で,約9割の人がHBs抗体を獲得でき,終生B型肝炎を発症することはないとされています.
しかしながら,この方法だけでは約1割の人は,十分な免疫を獲得できないわけです. みーは大学に対して「抗体が陰性だが,どうすればよいか?」と問い合わせましたが,「こちらでは必要な接種と検査をしましたので,ご自身で判断してください」という返事でした.大学としてはやるべきことをやっているので責任はない,というのは納得できますが,陰性のままで臨床実習に行くのはかなり不安です.
みーはいろいろと調べた上でなんとか抗体陽性にすることができました.この時の知識を,同じように悩んでいる人のために以下にまとめましたので,参考にしてください.
なお,上述の大学の事務的対応と同じにはなってしまいますが,みー(=管理者)は医学的な助言を行っているわけではありませんし,このページの利用によって生じたいかなる損失・損害に対してみーは責任をとりませんので,最終的にはご自身の判断で行動してください.しかし,できるだけ正しい情報を掲載するように務めています.
ワクチン接種
B型肝炎ワクチンは,1コースに3回接種(0, 1, 6ヶ月)を行います.標準的なスケジュールは以下の通りです.
- 抗体価検査 (HBs抗体 >10mIU/mL ならば接種の必要なし)
- 1回目ワクチン接種 (0ヶ月)
- 2回目ワクチン接種 (1ヶ月)
- 3回目ワクチン接種 (6ヶ月)
- 抗体価検査 (1ヶ月以上後に測定.HBs抗体 >10mIU/mL ならば接種完了)
- 4回目ワクチン接種 (0ヶ月)
- 5回目ワクチン接種 (1ヶ月)
- 6回目ワクチン接種 (6ヶ月)
- 抗体価検査 (1ヶ月以上後に測定.HBs抗体 >10mIU/mL ならば接種完了)
- 抗体が獲得できず,HBV感染が否定されればnonresponderとなる.
摂取期間が長く,特に1クール目で抗体が獲得できなければ1年以上かかるので,計画的な接種スケジュールを立てる必要があります.
基準値
HBs抗体 がCLIA法で 10 mIU/mL(ミリ国際単位 / ミリリットル) 以上ならば十分な抗体を獲得できたことになります.
ワクチンの種類
- ビームゲン (日本製)
- ヘプタバックス(アメリカ製)
- Engerix-B (ベルギー製.国内未承認)
一般的には日本ではビームゲンが使われているようですが,水銀が使われているため,最近はヘプタバックスを使用することが多いみたいです.
3回の接種で陰性だった場合
約1割の人は3回の接種では免疫を得ることができません.従って,もう1クール(3回の接種)を行う必要があります.家の近くでB型肝炎ウイルスの接種を行ってくれる病院を探して,接種をお願いしましょう.面倒だしお金がかかりますが,B型肝炎を防ぐことができると思えば接種すべきです.
例えば大阪検疫所のサイトに,大阪府でB型肝炎ワクチン接種を行っている病院のリストがありますので,便利のよい病院を選べばよいでしょう.また,厚生労働省検疫所のサイトに,予防接種実施機関を検索できるサービスがあるので,これを利用してもよいかもしれません.
しかしながら,5%弱の人は6回の接種を行っても十分な抗体が得られないことが知られています.すでにB型肝炎に慢性感染しているか,nonresponder であると考えられます.Nonresponder と診断された場合は,B型肝炎ウイルスへの暴露が疑われる場合(つまり針刺し事故)にB型肝炎用免疫グロブリンを投与するなど適切な処置を行う必要があります.
みーの場合
ヘプタバックス3回に加えて2回のEngerix-Bの接種でやっと10 mIU/mL を超えることができました.しかしそれまではもしかしたら nonresponder なのではないかととても心配でした.
さいごに
B型肝炎はワクチンの接種でほとんどの人が感染を免れることができるので,特に医療に従事する人は適切な免疫がつくまでワクチン接種をするべきです.
針刺し事故でC型肝炎やHIVに感染する可能性は残っていますが,最も針刺し事故での発症率が高いB型肝炎を予防できます.
Nonresponder の人は針刺し事故に気をつけるしか予防する方法はありませんが,自分がNonresponderであることを知り,適切な行動と暴露時の対処法を勉強しておくことは重要だと言えるでしょう.
正式な多くの情報は以下の参考サイトに記載されているので,必要ならば読んでみてください.
参考
- 肝炎情報センター
- CDC Watch (2012/2) HBVワクチンでHBs抗体を獲得できない医療従事者はどうするか?
- Hepatitis B. Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases. The Pink Book: Course Textbook - 12th Edition Second Printing (May 2012)