レポートを指導医に提出する前に,自分である程度のチェックができれば評価が上がります.レポートの書式の流派は複数存在しますが,長いものには巻かれろの精神で,日本内科学会の書式に従うのが無難だと思います.
新内科専門医制度の導入に伴って,資料が新たに公開されており,特に症例報告・レポートに関する評価項目などが厳密に定義されるようになりました.
手引*1を参照しながら,レポートのチェックリストをまとめてみました.
- Problem Oriented System 方式の病歴要約を作成する.
- タイトルで,症例の内容を端的に表す.(例: るいそうと発作性の股関節痛から想起できた閉鎖孔ヘルニアの一例)
- 記載項目
- 患者情報 (ID,年齢,性別)
- 患者を特定できるような氏名,イニシアル,生年月日,居住地は記載しない.
- 患者IDは照合のため施設のIDとする.
- 出分野名
- 医療機関名
- 入・退院日
- 受持期間
- 転帰
- フォローアップ
- 患者情報 (ID,年齢,性別)
- 確定診断名
- 略語は用いない.
- 重症度・重要性に従い,主病名を記載する.
- 副病名,合併症を主要なものに限り記載する.
- 病歴
- 主病名について記載する.
- その他の主・副病名や合併症などすべての病気の経緯も簡潔に言及する.
- 既往歴,家族歴,生活歴等は全てを記載する必要はない.
- プロフィールや職業が重要な場合は記載する.
- 患者個人情報に繋がる紹介元(先)病院(医師)名の記載は避け,「近医」などと記載する.
- 入院時現症
- 不必要なものは減らして,要領よくまとめる.
- 検査所見
- ルーチンの記載についてはすべてを羅列する必要はない.
- 一般には肝機能正常という表現でも良い.
- その疾患で異常になり得るデータ,注目すべき正常値,特殊検査は然るべく記載する.
- 例えばLD等が重視される血液疾患等ではその検査値を記載する.
- 一般的な略語は使用してよい.
- 画像診断
- 経過図,検査等一覧表は必要に応じて挿入してよいが,それが症例の理解に役立ち,明瞭に読み取れるものに限る.
- プロブレムリスト
- プロブレムリストに挙げられるプロブレムとは,診断名ではなく患者を診察していく上で問題となる項目のリストである.従って,初診時に得られる,医療面接での問題点,臨床症状,診察所見,検査値の異常などからリストアップされるべきものである.
- 予め診断がついている項目(病名)も主病名として取り扱った疾患と関連のある場合はプロブレムとして挙げても良い.
- 入院後経過と考察
- 特殊検査等を含む診断とその根拠,治療とそのエビデンスおよび転帰について記載する.
- 考察は主病名を中心にその重症度,診断および治療法選択における妥当性を簡潔に議論する.
- 入院後経過と考察はそれぞれをプロブレム,病名毎に独立して記載するか,あるいは併せて記載するか,いずれの様式でも構わない.
- 外科紹介症例については手術所見を含めて考察すること.また,剖検症例については剖検所見を含めて考察すること.
- 文献
- EBMを重視し,症例に適した原著論文,ガイドライン,レビューなどを引用し,必ず文中に記載する.
- 全国の図書館で閲覧できるような公的機関の医学雑誌ないしは学術図書に掲載されたものからの引用に限る.
- web媒体からの引用について:「Up To Date」等,医療情報源や各学会,厚生科学研究班等から出されたガイドライン等,出典がオーソライズされたものとする.
- 退院時処方
- 薬剤名は一般名で記載する.なお,一般名の後に括弧書きで商品名を記載してもよい.
- 総合考察
- 主病名を中心にその重症度,副病名との関連について言及し,診断および治療法選択における妥当性を簡潔に議論する.さらに最後には患者を全人的に捉えた『総合考察』を必ず記載する.そこではプロブレム間の考察や社会的・心理的側面についても言及されていることが望ましい.
- 総合考察では,単に症例の感想を述べるのではなく,症例を客観的に評価することができているかどうかが評価される.
非常に網羅的な内容ではありますが,レポートや症例報告を提出する前に,一度上記内容を確認してある程度の誤りを直しておくと,評価が上がるのではないかと思います.
なお,LafLaboの薬剤名変換を利用することで,文章中の薬剤の商品名を一般名に一括置換することが可能です.よければお使いください.
*1:日本内科学会 J-OSLER 病歴要約 評価の手引き 2019/9/12版