予防接種にはたくさんの種類があり,それぞれに接種時期や回数,分類がなされています.
定期予防接種と任意予防接種
定期予防接種とは,通常時に行う予防接種のことで,行政が公衆衛生の見地から国民の健康の保持に寄与すると考えて「予防接種法」に基づいて実施するもののことです.したがって,実施主体は市町村であり,費用も市町村が負担します.
「定期」は「定期的に」という意味ではなく,「一定の年齢になったら」という接種時期が決まっていることに由来する名前です.
A類疾患とB類疾患の2つに分類されます.A類疾患は接種が努力義務になっているのに対し,B類疾患はそうではありません.
A類疾患として,
- ジフテリア(D)・百日咳(P)・破傷風(T)・急性灰白髄炎(ポリオ;IPV) (DPT-IPV)
- 麻しん・風しん (MR)
- Hib感染症
- 日本脳炎
- 結核(BCG)
- 肺炎球菌
- HPV
B類疾患として,
- インフルエンザ (①65歳以上の高齢者, ②60歳から65歳未満の慢性高度心・腎・ 呼吸器機能等不全者)
があります.A類疾患のゴロ合わせは,
日本の富士は百万歩計
日本の(日本脳炎)富(風しん)士(ジフテリア)は(破傷風)百(百日咳)万(麻しん)歩(ポリオ)計(結核, Hib)
現在はこれに水痘が追加になっています.
任意予防接種とは,自己負担で受ける接種のことで,当然費用は自己負担です.B類疾患の非該当者,黄熱,コレラ,狂犬病,HAV, HBV, 流行性耳下腺炎などがあります.A類疾患以外のよくあるワクチンとイメージしておけば大まかに分かると思います.
接種時期
上記の予防接種を定められた時期に順に行っていくわけです.
ワクチンデビューとして生後2ヶ月にB型肝炎(任意),ロタウイルス(任意),Hib,肺炎球菌ワクチンを同時接種するのが一般的です.その後,3ヶ月でDPT-IPVを,6ヶ月でBCGを接種します.
1歳になったら,MR,水痘,流行性耳下腺炎を接種します.その後,日本脳炎やHPVなどを必要に応じて接種します.
という流れで行います.詳細は以下のpdfに詳しく書いてあります.
とりあえず,Hib,肺炎球菌ワクチン,DPT-IPV,BCGが1歳以下で,MR,水痘,流行性耳下腺炎が1歳になったら,というところを最低限区別しておきます.
生ワクチン,不活化ワクチンとトキソイド
生ワクチンとは,弱毒化したウイルスや細菌を用いたもので,MRワクチン,水痘,流行性耳下腺炎,BCG,ロタウイルスが該当します.ゴロ合わせは.
生ビールとメロンムース
生(生ワクチン)ビー(BCG=結核)ル(ロタウイルス)とメロ(MR)ンム(ムンプス=流行性耳下腺炎)ース(水痘)
不活化ワクチンとは,ウイルスや細菌それ自体/成分を死滅/無害化したもので.DPT-IPV,日本脳炎,インフルエンザ,HAV, HBV, 肺炎球菌, Hib, HPVなどが該当します.
生ワクチンでないもの,というイメージでよいでしょう.
トキソイドとは,毒素の毒性をなくし,免疫原性だけを残したもので,不活化ワクチンに分類されます.ジフテリアと破傷風が該当します.
異なるワクチンを接種する場合は,少し間隔を開ける必要があり,この時に生ワクチンか不活化ワクチンかで開ける期間が変わってきます.生ワクチンから次のワクチンまでは27日(4週間)の間隔を置く必要があるのに対し,不活化ワクチンならば6日間(1週間)置けばよいことになっています.
予防接種健康被害救済制度
予防接種の副反応による健康被害は,極めてまれではありますが不可避的に生ずるため,接種に係る過失の有無にかかわらず迅速に救済されることになっています.
予防接種法に基づく健康被害救済制度があります.定期予防接種は市町村が行いますので,市町村に調査委員会が設置され,給付されます.
任意予防接種の場合は,独立行政法人医薬品医療機器総合機構によって救済されます.
こういった制度を理解した上で,防げる疾患をしっかりと防ぐことが重要なのでしょう.