手術をする前には手洗いをして減菌するのが当たり前だと指導されるが,実際に手洗いは患者の術後の感染を防ぐのに役に立っているのか,エビデンスを調べてみた.
医療現地における手術衛生のためのガイドライン2002によると,
外科医の手についている細菌は,術中に術野に入ると創感染の原因となり得る.
とある.みーは,手袋をしているから手の細菌が術野に入ることはないのでは?と思ったが,術野に手袋に穴が空いたり裂けたりした場合も,リスクを減らすことができるのだそうだ.
ということは,手袋に穴が空いたりしてもぎりぎりセーフなレベルまで減菌できれば十分なはずで,このレベルを達成できる一番簡単で短時間でできる手洗い方法が理想だと言える.
手洗いの変遷を古い順にまとめてみた.
1800年代にはListerが石炭酸(フェノール)による消毒を行うようになったのが始まりである.
ブラシ法(ヒュールブリンガー変法)は,スクラブ剤とブラシを用いて手指から前腕部を消毒する方法である.10分程度の時間を要するうえ,皮膚の損傷が多いために細菌が増殖しやすく,必要性が否定されている.
ツーステージ・サージカル・スクラブ法(ツーステージ法)は,スクラブ剤による手洗い後にアルコール擦式剤で消毒する方法である.6分程度の時間を要する.現在多くの施設で採用されている方法である.
ウォーターレス法(ラビング法)は,普通石鹸による素洗いと速乾性擦式手指消毒剤のみで行う新しい手術時手指消毒法である.4分程度の時間を要する.ウォーターレス法に用いる速乾性擦式手指消毒剤として,ウエルアップハンドローション®[サイト, 添付文書]があり,有効成分としてクロルヘキシジンやエタノール含む.
今後はウォーターレス法が普及していくと思われるので,病院実習で叩きこまれたツーステージ法は忘れてよい日が来るのだろう.