みーの医学

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騒音性難聴のc5-dipとは?

騒音性難聴とは,慢性的な騒音によって感音難聴となる疾患のことであり,85 dB以上でイヤホンで音楽を聞いている人などに発症しやすい.これに対して一時的な巨大音(>130 dB)による同様の症状の疾患を音響外傷性難聴という.

特徴としては,両側性の感音難聴であり,聴覚補充現象が陽性であることであるが,最大の特徴は4000 Hz付近の聴力低下を呈することである.4000 Hz付近の周波数のことを,c5dip というのだが,c5dip とはなんだろう.

c5 = 4184 Hz

十二平均律では,Aが440 Hzと定義されていて,12√2 倍づつ周波数を高くしていくことで,音階が作られる.

コードは,A, A#, B, C,... と続くので,Aから3つ高い音がCである. したがって,C は 440 *(12√2)3 = 523.3 Hz となる.

ドイツ式のオクターブ表記で,523.3 Hzの C は,c2 と表記する.c5は3オクターブ高い音なので,523.3 * 23 = 4186 Hz となる*1

つまり,c5 = 4186 Hzであり,c5dipとは,4000 Hz周辺がdip (=下がる) している,というだけの意味である.

なお,c5dip のcを大文字にしている文献が見られるが,ドイツ式のオクターブ表記で大文字を使うとより低い音を意味してしまうので,誤りである.小文字でc5dipと書くべきである.

正確に 4184 Hzが障害されるわけではない

f:id:atsuhiro-me:20151124003155j:plain:w300 *2

このオージオグラムは騒音性難聴の患者さんの検査結果なのだそうだが,4000Hzが最も障害されているわけではないことが分かる.むしろ5000Hzが最も障害されている.

昔はオージオグラム検査を音叉で行っていて,1000 Hz (c3), 2000 Hz (c4), 4000 Hz (c5), 8000 Hz (c6)と 2倍毎の周波数を使っていたために,c5が最も障害されると思われていただけである.更に詳しく調べれば,4000 Hz から 6000 Hz まで幅広く障害されているケースが多い.