鼠径ヘルニアとは,鼠径靭帯情報で鼠径部に脱出するヘルニアのことです.
- 外鼠径ヘルニア
- 内鼠径ヘルニア
- 膀胱上ヘルニア
の3つに分類されますが,このうち,外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニアがややこしいので,違いを整理します.
輪っかと穴
意味が分からないですが,内鼠径輪は外鼠径窩とも言います.これは,内外という概念が2つの軸に対して用いられていることに由来します.
鼠径管という管があります.この管は表皮側はmedial(正中面に近い)にあり,腹壁側はlateral(正中面に遠い)にあります.このmedialとlateralという軸を内・外と訳すと「外鼠径窩」になります.窩は穴のことです.穴は正中面に近いかどうかで区別します.
体の表面と中という軸を内・外と訳すと「内鼠径輪」「外鼠径輪」となります.輪っかは体表にあるか,中側にあるかで区別するからです.
内鼠径ヘルニアも外鼠径ヘルニアも外鼠径輪から体表に出てくるので,内鼠径窩から出てくるものを内鼠径ヘルニア,外鼠径窩から出てくるものを外鼠径ヘルニアと呼びます.
臨床的違い
外鼠径ヘルニアは,鼠径管という道を通る構造的な問題ですから,小児に多発します.立位など腹圧が上昇することで症状が増大します.透光性のない還納性腫瘤です.治療として,ヘルニア嚢の高位結紮術を行います.
内鼠径ヘルニアは,腹壁が脆弱な部分が破れてできるので,中年の男性に好発します.腹壁が伸びて薄くなっている肥満の人に多いです.鼠径部の半球状腫瘤です.治療として,Tension free法を行います.
治療の選択は,1歳までは自然治癒することが多いです.1歳過ぎると手術を考慮します.絞扼があれば手術をしますし,絞扼がなければ用手還納後に待機的に手術を行います.