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血清(serum)と血漿(plasma)の違いは,全血から細胞成分を取り除いたものの中に,凝固因子が含まれるかどうかです.
- 血漿: 抗凝固剤を加えて遠心分離した上清.凝固因子を含む.
- 血清: 抗凝固剤を加えずに放置した上清.凝固因子を含まない.
下の図にまとめてみました.
覚え方
「血清」は「清い」わけです.凝固因子という余計なものが入っていない清いもの,と理解すると覚えやすいです.
成分の違い
血漿は,凝固反応を起こしていない成分ですから,体内を流れていた時の状態を維持したものです.生体内の状態を反映していると考えられます.
これに対して血清は,凝固反応過程で成分が少し変化しています.フィブリノーゲン,血小板,グルコースは,凝固反応で消費されるので濃度が低下します.カリウム,LDH,アンモニア,乳酸は,凝固反応で細胞から遊離するために濃度が上昇します.
採血検査での使い分け
血清
血清は,血清分離用採血管を用いることで簡単に採取可能です.分離剤が入っていて,下の図のように遠心後に分離剤が血清と血餅を分けてくれるわけです.
左)採血前 中)採血後/遠心前 右)遠心後 *1
凝固反応で濃度が変化しない成分の検査に使われます.生化学検査や,免疫血清検査です.
血漿
血漿の場合は,抗凝固剤に何を用いるかによって更に分類されます.
ヘパリンを用いることで,血液ガス測定を行います.
EDTAを使うと,Ca2+と非可逆的に結合するので,凝固系が阻害されます.したがって,血球を観察するのに適しています.血液学的検査(血算や血液塗抹標本など)を行います.
クエン酸は,Ca2+と可逆的に結合するので,凝固系が可逆的に阻害されます.採血保管時は凝固系を止めた上で後で凝固系の測定を行うことが可能です.凝固検査や血沈検査を行います.
NaF(フッ化ナトリウム)は,解糖系の最後のステップを担うエノラーゼを阻害します.解糖系を止めることができるために,グルコースの消費が止まり,血糖の正確な測定が可能です.
採血の順番
以上のことを理解すると,採血管の順序が理解できます.別の採血管に含まれている物質が混入することで,検査結果に影響がでるものから優先的に分注していくのが原則です.
いくつか流派がありますが,血清用の順番を除いた血漿の検査は,
凝固検査→赤沈→ヘパリン→EDTA→解糖阻害剤
の順番です.
クエン酸とヘパリンは,クエン酸ナトリウム,ヘパリンナトリウムとしてNaを含むため,これらが混入することでNaは偽高値となります.
真空管採血のときは,針を穿刺した直後の血液には少し組織液が混ざることがあって凝固の原因になりやすいため,凝固しても影響の少ない生化学(血清)を最初に分注します.シリンジ採血はこの逆になるわけです.
EDTAはCa2+と結合し,偽低値となります.
*1:http://www.jpclt.org/01outline/020101-1.html
*2:写真とイラストでよくわかる!注射・採血法―適切な進め方と,安全管理のポイント (ビジュアル基本手技 4) より改変