みーの医学

2016年3月に110回医師国家試験に合格しました.医療従事者のためのWebサービスであるLafLaboの開発者です.

たかが便秘,されど便秘

(便秘の話のため,お食事中の観覧はご遠慮ください.)

便秘は,酸化マグネシウムやセンノシドを処方すれば改善することがほとんどです.しかしながら,それだけでは不十分な場合が時々あります.

10年前から糖尿病の中年の男性が,便秘を主訴に来院しました.4日前の排便が最後で,便意はあるがお腹に力を入れても全く排便できず,野菜をたくさん食べたけれども排便できず,イチジク浣腸をしても排便できず,次第にお腹が張って苦しくなってきたため,耳かきを肛門から入れて掻き出そうとしたそうです.その結果,便の代わりに血が出てきたため,これはヤバイと思って来院されたとのことでした.

腸穿孔(腸に穴があくこと)の場合は緊急手術になるのですが,この患者さんは幸いにも腸穿孔はなく,直腸診(肛門から指を入れて直腸を観察すること)で巨大な便を触れたため,グリセリン浣腸を行いました.「やっと便が出ました〜」という笑顔と共に,長径25 cmはあると思われる巨大な便が出ました.長年の糖尿病による慢性的な便秘*1が疑われました.

なぜ耳かきを使おうと思ったのか?その耳かきはちゃんと捨てたのか?など,いろいろと聞きたいことはありましたが,ほっとしたような顔をされていたため,水に流すことにしました.耳かきは耳垢を掻き出すものなので,便も掻き出せると思ったのかもしれません.

直腸に異物を挿入すると,最悪の場合腸穿孔で手術をしなければならなくなります.くれぐれもお気をつけ下さい.

*1:糖尿病の合併症である末梢神経障害によって腸が正常に蠕動できなくなり便秘になるのだと考えられています.