みーの医学

2016年3月に110回医師国家試験に合格しました.医療従事者のためのWebサービスであるLafLaboの開発者です.

初期研修中こそ外来を

みーの病院の研修は,主体性が求められます.指導医にやりたいことを言えばやらせてもらえることがほとんどですし,逆に言われたことを淡々とこなすだけでも問題はありません.

m3.comに「研修病院選び方ご法度」というシリーズの記事があります.下記に日本の研修医に外来の勉強をする機会がないことが記されています.

【研修病院選び方 御法度・第11回】続・救急で選ぶな!?研修病院 | m3.com 研修病院ナビ

内科や外科をローテートしているとき、内科外来や外科外来を研修医が担当し、「外来ではこのように患者を診るのだよ」とはじめの一歩から丁寧に教えてくれる外来教育は日本には存在しない(と敢えて断言する)。驚くべきことに初期研修が終わった途端、ある日突然外来に立たされて、見よう見マネで外来患者をこなす、なんちゃって外来から、その第一歩が始まっているのがほとんどなのだ。大きな病院ほど外来は専門分化されており、専門領域における知識が不十分な研修医が外来に立つことはできない、いや、立たせることができないのがその内情である。

研修医2年目で皮膚科をローテーションしました.皮膚科は入院患者がほとんどいないので,指導医の外来のお手伝いをするのが研修医の役割でした.仕事の内容は,皮膚生検の助手,軟膏の塗布,培養検体の採取などです.この時,研修医になってから外来見学をしていないことに気づきました.お手伝いをする傍らで,指導医の外来の方法や鑑別疾患の挙げ方,必要十分な患者説明など,たくさんのことを学びました.こういったことは実際に見学しないと分からないことで,研修医用の本をいくら読んでも身につかないものです.

研修医の仕事のほとんどは入院患者の治療に関することなので,言われるままに仕事をこなしていると,外来見学をする機会は全くありません.また,救急外来の研修では,来院した患者さんの現時点での評価をする能力は身につきますが,その人の数年先を考えて継続的に診察する技術は身につきません.

現在は,血液内科の指導医にお願いをして血液内科の外来を時々見学させてもらっています.外来の技術を日々勉強しています.

例えば,DLBCL stageⅢの患者さんに対してR-CHOP療法を6クール行い,完全奏効に至った後は無治療経過観察を行います.*1 しかしながら,無治療経過観察の具体的な方法は専門書にも詳しくは書いてありません.患者さんとどんな話をするのか?どんな所見を取るのか?どんな頻度でsIL-2Rなど血液検査をしていくのか?再発を評価する方法は?分からないことだらけです.

無治療経過観察は非常に難しい外来だと思います.慢性疾患の通院治療の難しさは以前記事にした通りですが,薬を出さないのに定期的に患者さんに来院していただくことは,よほどの信頼関係がなければ継続困難なことです.さらに外来は予約時間から遅れていくことが多いので,1時間待ってもあの先生に会いに行こうと思わせなければならないのです.

http://medk.atsuhiro-me.net/entry/2016/11/18/011144

みーの指導医の患者さんの中には,治療後10年間無治療経過観察を行っている人が時々いらっしゃって,何気ない話をしているだけなのに,「先生とお話すると安心します.」と言って笑顔で帰宅していく患者さんがいます.こういう風景を見ると,医者は知識だけではやっていけないのだなと痛感します.

患者さんと10年の付き合いをすることは,医者になってまだ2年目のみーには想像できない世界ですが,そういう長期的な視点で日々の診療を行っていくことが重要なのだと感じました.

*1:造血器腫瘍診療ガイドライン http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_5.html