みーはまだ社会人になって4年しか経っていませんが,これから社会人になる人が,職業を選択する際の参考になればと思い,この記事を書きました.
みーは医師になってもうすぐ4年経ちます.血液内科で仕事をしており,白血病や悪性リンパ腫の患者さんの治療をしています.自分で言うのも変ですが,自分の能力を発揮できる仕事に就けたと感じています.
働いた対価としてお金をいただくのは大変なことです.これはどんな仕事にも当てはまると思います.ただし,医師という仕事はその中でも特殊な適正が求められるように思います.
今までに様々な人に会いました.少し重い話ですが,一部の人はこの世から去りました.1人は大学時代の知り合いで,非常に成績優秀でやさしい性格でしたが,自殺で亡くなりました*1.もう1人は後輩の研修医で,やはり非常に頭がよくてやさしい性格の人でしたが,自殺で亡くなりました.自らの命を絶った理由を直接尋ねることはできませんが,並々ならない事情があったのでしょう.
みー自身も医学生時代と研修医時代は辛かったです.医学生は医師ではありませんが,医師と同等の能力や対応を求めてくる人も世の中に存在するため,プレッシャーを感じます.また,周囲は皆医学生なので,アイデンティティを確立するのが難しいです.「とりあえず教科書に書いてあることを勉強しているけれど,自分は一体なんのために頑張っているんだろう?この勉強を頑張れば将来の役に立つらしいけれども,実感が沸かない...うーん.」という辛い気持ちが続きます.国家試験に合格した時は嬉しいですが,研修医になってしばらく何も仕事ができない状況にもがき苦しみます.研修医だからといって患者さんは許してくれませんし,指導医からはいろいろな指摘を受けます.一生懸命診療をしても,手のひらからこぼれ落ちていく患者さんは後を経ちません.仕事が終わって家に帰ると,勝手に涙が溢れてくることもありました.今思い返すとDSM-5のうつ病の診断基準は満たさないものの,いくつかの項目が該当した時期があります.研修医はうつ病になりやすいという報告もあります*2.
人生は途中でやり直せるという意見もありますが,可能ならば最短経路で進みたいものです.医師を目指して途中で諦めるぐらいならば,最初から他の仕事を選択した方がよいでしょう.少なくとも,みーが知っている2人は命を失わずに済んだかもしれません.
多くの大人は,子供に将来の夢を尋ねます.
大人:「将来は何になりたいの?」
子供:「うーん.お医者さんかな.」
大人:「どうして?」
子供:「だって誰かが困っていたら助けてあげたいもん.」
このような会話は,小学生から大学の2次の面接試験まで見られます.しかし,職業選択という観点からは非常に危険な質問です.誰かが困っていたら助ける仕事に就くということは,裏を返せば,誰かが困っていて助けようとしても救えないことを日常的に経験することになります.したがって,職業選択をする時は,
その仕事の苦難を受け入れられるか?
と自分に質問してみてください.
医師は,病気の人を治療する職業です*3.治療がうまくいけば感謝されますが,救えない人を目の前に絶望することがあります.
看護師は,病気の人の生活を支える職業です*4.治療がうまくいけば感謝されますが,終末を生きる人に寄り添い続けなければいけません.
ソフトウェアエンジニアは,ソフトウェアを扱う職業です.うまく動作すればよいですが,エラーが出れば原因を同定して修正しなければなりません.
美容師は,髪型を整えて人を美しくする職業です*5.美しいお客さんの髪型を整えるのはよいですが,ブサイクなお客さんに「かわいい髪型にしてね」と言われ,一生懸命整えても,「えー.これじゃだめだわ」と否定されることもあるでしょう.
投資家は,自分の資産を投資して増やす職業です.資産が順調に増えればよいですが,資産が減少して生活が辛くなることもあるでしょう.
みーは未だに患者さんを看取るのは精神的に辛いですが,患者さんに向き合おうと努力しています.あなたがもし医師を目指しているならば,医師の苦難を受け入れられそうか,考えてみてください.もしも無理だと感じるのならば,ぜひ別の仕事を検討してください.ただし,嫌なことばかりではありません.やり甲斐もあります.救えなかった患者さんの家族から,感謝の言葉を頂戴することもあります.
人生は一度だけ.どんなにお金があっても,友達がいても,この事実だけはゆるぎません.一度しかない人生なのですから,満足できる仕事に就いてください.この記事が職業選択の参考になれば嬉しいです.