推算糸球体濾過量 (eGFR) の単位は,mL/min/1.73m2 です.無駄に長い単位ですね.単位の中に体表面積補正による1.73が入っていますが,なぜ分母にあるのでしょうか?そもそも単位の中に数値が存在するのは問題ないのでしょうか?
添付文書を確認する
腎機能検査用薬として有名なイヌリード注の添付文書を確認してみます.
まず,GFRを測定するためにイヌリンを静脈内投与する理由を確認します.
静脈内投与されたイヌリンは糸球体毛細血管を自由に透過し、尿細管では分泌も再吸収もされないことから糸球体ろ過量(GFR)測定のための標準物質として用いられており、真のGFRを示すとされている。
この性質を利用して,糸球体濾過量を計算することが可能です.
定量した尿中イヌリン濃度(mg/dL)、血清中イヌリン濃度(mg/dL)及び1分間尿量(mL/min)から以下の計算式を用いてイヌリンクリアランスを算出し、3回の平均値をとる。
Cx=(Ux × Vx) / Px × (1.73 / A)
Cx:イヌリンクリアランス(mL/min/1.73m2)
Ux:尿中イヌリン濃度(mg/dL)
Px :血清中イヌリン濃度(mg/dL)
Vx:単位時間あたりの尿量(mL/min)
A :身長・体重から求めた体表面積(m2)
糸球体濾過量は,1分間に濾過される血漿の量として定義されます.したがって,Vx に Ux / Px をかければよいことがわかります.単位は mL/min です.
糸球体濾過量は体型により変動するので,簡単に比較できるように,体表面積で補正します.日本人の標準体表面積は1.73 m2 とされていますので,1.73 / A をかけます.この部分の単位について,補正したことを示すために数字を単位に組み込めば, 1/1.73m2となります.
以上より,eGFR の単位は,mL/min/1.73m2 となります.
参考文献
- 折田 義正 新しい検査法 イヌリンクリアランス測定法 モダンメディア 2007年2月号(第53巻2号)