みーの医学

2016年3月に110回医師国家試験に合格しました.医療従事者のためのWebサービスであるLafLaboの開発者です.

カロリックテストのまとめとゴロ合わせ

温度眼振検査 ( カロリック検査; caloric test ) とは,Frenzel眼鏡をかけた仰臥位の被験者の外耳道に冷水又は温水を片側づつ注入した時に見られる眼振を観察する検査である.

メカニズム

右の外耳道に冷水を入れる状況を考える.冷水を入れると,耳の中の温度が低下し,最も近くに位置する外側半規管の中のリンパ液の温度が低下する.すると下の図のように,下からみて反時計回りにリンパ液が対流する.この動きを右耳のみが感知して,体が右から左に回転しているように感じる.すると目はそれに逆らうように左から右に視点を移動させるように動く.これを維持するために右から左への急速な眼球運動が発生する.つまり,左方向の眼振が出現する.

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温水の場合は,逆に暖められるためにリンパ液は逆方向に対流する.すべての方向が逆になり,右方向の眼振が出現する.

反対側の場合も同様に考えたらよく,左耳に冷水を入れると右方向の眼振が,温水を入れると左方向の眼振が観察される.

検査方法

上記の試験を交互に行う.眼振が出にくかったり,左右で差がある場合は,前提神経障害が疑われるので,聴神経腫瘍,メニエール病などの可能性を示唆する.

ゴロ合わせ

とはいうものの,これだけのことを試験中や患者の隣で考えるのはたいへんなので,カロリックテストでは温水注入では注入側に向く眼振を認めると覚えるのが楽である.

耳は人の恋の如し.暖かく接すれば近づくし,冷たく接すれば距離は遠ざかる.

と覚えるのがコツらしい.暖かく(=温水)接すれば近づく(=注入側に向く眼振)

小ネタ

ちなみに,みーはこの検査をやってもらったのだが,冷水を入れてから20秒ぐらいしてから体がどんどん回転するような感覚を体験した.決して気持ちのよい検査ではないが,人為的にめまいをおこす方法があることに感動した.

みーみたいに疑い深い人は,「外耳道を少し冷やしただけで,めまいがするほどリンパ液が滞留するのか?」と疑問に思うだろう.めまいがしている仰臥位の状態からうつ伏せになるとめまいの方向が逆になれば,温度変化による滞留が理由であることが証明できる.みーは自分で体験してみたが,うつ伏せになるとめまいの方向が確かに逆になった.カロリックテスト,面白い.