みーの医学

2016年3月に110回医師国家試験に合格しました.医療従事者のためのWebサービスであるLafLaboの開発者です.

医師臨床研修マッチングの対策とまとめ

この記事は,みーが無事に第一希望の病院にマッチした後に今までを振り返えって書いたものです.

医師臨床研修マッチングとは,医学科の学生と初期臨床研修病院とのお見合いのようなもので,双方が行きたい希望を提出して,全体が最も幸せになれるようにアルゴリズムで決定するシステムです.

公式ホームページには以下のように書かれています.

研修医マッチング(組み合わせ決定)とは、医師免許を得て臨床研修を受けようとする者(研修希望者)と、臨床研修を行う病院(研修病院)の研修プログラムとを研修希望者及び研修病院の希望を踏まえて、一定の規則(アルゴリズム)に従って、コンピュータにより組み合わせを決定するシステムである。

医師臨床研修マッチング(研修医マッチング)について より

マッチングのシステムの詳細は公式ホームページに書かれていますが,マッチングアルゴリズムの図解というFlashが非常にわかりやすいのでおすすめです.

こういったシステムなので,自分の希望する初期研修病院に選ばれるには病院に気に入って貰わないといけないわけです.定員割れをしている病院ならばマッチングの試験を受験すれば大丈夫だとは思いますが,人気病院の場合は,きちんと就職活動をする必要があります.

[目次]

希望の病院に選ばれるには?

まずは自分が希望する臨床研修先を見つける必要がありますが,病院実習や病院見学を通じて,かなり絞られてくると思います.自分が将来やりたくなるであろう診療科や,先輩方の雰囲気,臨床研修制度,お給料などが,判断材料となるでしょう.

自分が希望する病院に自分を売り込むためには,病院がどういった人材を求めているかを知る必要があります.みーが思うに,答えは研修医の先生方です.その病院で働いている研修医の先生方は,直近のマッチングにて病院に選ばれているわけで,彼らこそが病院が求めている人材なわけです.したがって,病院を訪れる時に,研修医の先生方がどんな性格・雰囲気なのかを見ておけば,マッチング試験の時に,「自分も彼らと同じような人です.」とアピールすることができるので,得策でしょう.まとめると,病院が望む人材は,直近の研修医のような人ということを意識し,アピールをするのがよいわけです.

なお,病院によっても求める人材は違います.例えば救急車受け入れがたくさんありバリバリ研修医が働いてる病院に,「自分は患者さんと時間をかけてじっくりしっかり向き合っていく医者になりたいです」とアピールしても,あまり響かないと思います.それよりは,「自分はとにかくたくさんの症例をこなして,経験豊富な医師を目指します.」とアピールした方が気に入ってもらえるでしょう.逆に,1症例にじっくりと時間をかけることができるまったりとした病院の場合は,先ほどのじっくりアピールはかなり有効なのだと思います.

病院見学の時期

こういった情報を得るには,いろいろな病院で実習したり,見学に行ったりするのが一番確実だと思います.しかし,病院見学をするためには,2週間前ぐらいには病院にアポイントメントをとって,当日見学に行って自分を売り込みながら病院の情報をしっかりと得て,見学が終わったらお礼のメールなり手紙なりを出してと,結構な時間と体力と精神力が必要になります.さらに病院は平日の昼間にしかフル稼働していないですが,学生は大学で授業や実習があるために,病院見学に行く日は限られてきます.以下の日程が適しているでしょう.

  • 平日だけど大学生だけが休みの日や長期休暇
  • 大学の授業があるけれども,卒業要件には関わりが薄い日 (=サボれる日)

病院見学に行く学年に関しては,みーは病院実習が始まってしばらくしてからがよいと思います.病院実習に始まる前の学年から行くべきと勧めている人もいますが,病院のシステムが分かっていないのに病院見学に行っても,病院の雰囲気を感じ取る余裕などはなく,あたふたして終わってしまうだけな気がします.自分をアピールすることは難しいでしょう.

また,マッチング試験の直前になって病院見学に行くと,ギリギリで精神衛生上よろしくないのではないかと思います.したがって,病院実習が始まってから,マッチング試験の時期を迎えるまでに病院見学はあらかた済ませておく必要があるわけです.

さらに,3,4月の病院見学は避けたほうがよいです.病院を辞める人,病院に就職したばかりの人が多く,業務の引き継ぎや最適化に追われているために,見学の学生の相手をしてくれる人が他の時期に比べると少ないからです.

ちなみに,初期研修医として働きはじめる時に2年目の先生方に会えるのは,6年生の春から夏にかけてのみなので,希望する病院はこの時期にも見学に行っておいたほうがよいです.逆に,これ以外の時期に行って知り合った先生方は,自分が働き始めてるまでに病院を辞めてしまう可能性があるわけです.XX先生と一緒に働きたいと思ってその病院を選んでも,予定通りにはならない可能性は常にあるわけで,こればかりは社会のシステム上どうしようもないことです.この点を事前に理解しておけば,予定通りにならなくてもガッカリし過ぎずに済むと思います.

こう考えると,かなり計画的に病院見学をしておく必要があることが分かると思います.5年生から病院実習が始まる場合は,5年の夏休み,冬休み,6年の5-7月ぐらいしかないということになります.結構たいへんです.

試験対策

病院見学で自分の行きたい病院が決まって,その病院の情報も集めることができたら,試験対策ができます.マッチング試験で自分をアピールすることができる機会として,一般的に以下のようなものがあります.

  • 履歴書などの書類選考
  • 面接試験
  • 小論文
  • 筆記試験

履歴書を書くは意外にたいへんですし,時間がかかります.Googleで「履歴書 書き方 新卒」などと検索すると参考になるサイトがたくさんヒットします.みーが思うポイントをいくつか紹介します.まず,履歴書の用紙ですが,JIS規格のものですと職歴欄が非常に長いためにアピールできる欄が少なくなってしまいます.ですから,職歴は短めで,アピール欄がたくさんある履歴書を使った方がよいと思います.アピールできる点としては,部活を頑張った,自分の性格と適性,今までの経験などがあると思います.履歴書は病院によってウエイトが全然違うので,普通に書けば十分な場合もあると思いますし,しっかり書く必要がある病院もあるでしょう.マッチングの履歴書の書き方は,月刊「KOKUTAI」のマッチング特集にも詳しく書いてあるので,参考になると思います.

http://igakukyoiku.co.jp/kokutai/igakukyoiku.co.jp

面接試験ですが,これは事前に病院見学などで直近の試験を受けた研修医の先生方に,どんなスケジュールで何を聞かれたかを確認しておくと心の準備が楽になると思います.面接では,ぱっと聞かれてぱっと答えることが要求されるので,自分の実力が試される試験と言えるでしょう.ただし,後述の小論文対策とも重複しますが,現在の医療の問題点や理想とする医師像など,定番の質問もありますので,これに対しては事前にある程度自分の答えを準備しておくことで,対応しやすくなるのではないかと思います.

小論文対策は,想定されるたくさんの質問に対する自分の一貫した矛盾の内意見を持っておくことが重要だと思います.小論文対策として以下の本がおすすめです.ただし,この本はあくまでも小論文でよくあるトピック集だという位置づけで勉強するべき本です.読むだけでなく,実際に自分の言葉で小論文を書くことが重要だと思います.この本の解答例は首をかしげるものが多いので,みーは参考にしないほうがよいと思います.小論文をギャグで締める勇気はありません.

筆記試験対策は,国家試験対策だと思います.かなり高度な知識を要求してくる病院ならば,それ用の対策をする必要があると思いますが,一般的には国家試験レベルの知識で十分だと思います.国家試験が半年早まったと思って勉強をするわけです.

試験が終わったら

病院での試験は7月から8月に行われることが多いです.マッチングの結果発表は10月なので,2ヶ月ほど落ち着かない時期を過ごすことになります.

マッチングの希望登録はオンラインで行いますが,システム上,自分が研修を受けたい病院順に書くことが大切なので,変に悩み考えこむ必要はないようです.

病院によっては内定メールや内定電話があるみたいです.返事が重要で,双方が第一志望ならばなんの問題もないのですが,第一志望でない病院からこういった連絡をもらった場合は,「ありがとうございます!第一で書きます!」と安易に言ってしまうと,問題になります.「ご丁寧に連絡ありがとうございます.」ぐらいで波風立てずに切り返すのがよいでしょう.第一希望で登録しますと言ったのにそうせず,結果的に他の病院にマッチしてしまうと嘘をついたことになりますので,将来医師として働く上で支障がでることも十分考えられるからです.メールだと返事を書く時間がとれるので冷静な対応ができますが,電話だとつい余計なことを言ってしまう可能性があるので,注意が必要です.

マッチングで内定を出しても,嘘をつかずにやり過ごすだけの無駄な読み合いになるだけなので,意味がないように思います.みーも第一希望でない病院から内定メールが届きましたが,数日余計な気をもむことになっただけでした.内定メールが来ていたのにマッチしなかったり,第一と嘘をついてマッチせずに面倒なことになったりといった噂も少ないながら存在するようなので,波風立てずの精神で切り抜けるしかないように思います.

内定通知がない病院しか受験していなかったり,内定が来ない場合,友達が内定の話をしていると非常に不安で心もとない気持ちになりますが,そもそも内定通知をしない病院の方が圧倒的に多いはずですので,周りには流されずに毅然とした態度で自信を持って過ごせばよいのではないかと思います.

結果発表

マッチングの結果発表はマッチングサイトにログインすることで見ることができます.研修してもよいと思う病院のみを登録するわけですから,アンマッチ以外だったら喜べるとは思いますが,実際第一希望にマッチするとテンションが上がりますし,第三希望だと,しょんぼりするものです.やはり思い入れが違いますから.そうはいっても,来年の研修先の変更は絶対にできないので,国試にむけて気持ちを整理するべきなのでしょう.

残念ながらアンマッチの場合は2次募集をすぐさま開始する必要があります.2次募集は病院によっては先着順に近いシステムのところもありますし,ある程度の期間が経ってから試験をする病院もあるみたいです.このあたりは病院毎に情報を確認する必要があるみたいです.

病院との仮契約

マッチした病院と,仮契約を結びます.一般的には病院から郵送で契約書が送られてくることが多いようです.みーの場合もそうでした.同年の医師国家試験に合格したら,あなたを雇います,という内容です.つまり不合格ならば無効になるわけです.国試勉強の気合が入る瞬間です.

その他

最後に,本文に組み込めなかった雑多な話をします.

レジナビフェア

レジナビフェアなど,合同の病院説明会は1年に何度か全国で開催されます.現在の研修医の市場は圧倒的に売り手市場なので,学生は参加するだけでいろいろと特典が受けられます.普通の就職活動とは真逆なので,社会勉強だと思って1度は参加してみたらよいと思います.みーは4回生の時にレジナビフェアに参加してみましたが,いろいろな病院の話を聞くことができたので,スクリーニング作業として非常に有意義でした.会場で配布されていた全国の研修病院一覧冊子も便利でした.ただ,こういった合同説明会はスクリーニング作業しかできないので,ある程度希望する病院が絞り込めてるならばメリットはほとんどないです.貴重な1日を無駄にします.以上より,みーは合同説明会には早いうちに参加することはよいことだと思いますが,6年生になって参加する意味はないと思います.

まとめ

一般的な就職活動に比べると,マッチングは非常に効率的でよい仕組みだと思いますが,マッチング特有のルールがあり対策が必要です.情報戦の1面もあるので,希望する病院に行くためには,早いうちから対策をするのが重要のようです.